マンションの火災保険って必要?

マンションにおける火災保険の必要性について考えてみましょう。日常生活での火災予防には細心の注意を払うことが肝要ですが、火災保険に加入する理由は単に「自ら火災を発生させないため」だけではありません。


他の住戸からの火災で被害を受ける「もらい火」のリスクや、慎重に注意していたにもかかわらず火災が発生した場合の自己負担、さらには自ら火災を発生させてしまった場合の相手への迷惑を考えると、火災保険の重要性が浮き彫りになります。火災保険には相手の保険では補償されない「類焼損害補償」や「失火見舞費用」などの付帯補償があります。また、火災だけでなく自然災害や盗難などに対する補償も含まれており、リスクに対する幅広い保護を提供しています。火災保険の補償内容を確認することで、思いもよらなかったリスクに備えることができます。


火災保険の主な補償範囲

火災保険の補償範囲は広範囲にわたります。以下に、代表的な補償対象をいくつか紹介します。


・火災・落雷・破裂または爆発

失火やもらい火、放火による損害

ガス漏れなどによる破裂・爆発による損害

・雪災・風災・雹(ひょう)災

吹雪、強風、雹などによる窓ガラスや屋根の破損

・水災

台風、暴風雨、豪雨などによる洪水・高潮・土砂崩れなど

・建物外部からの物体の落下・飛来・衝突

自動車や航空機の衝突、飛び込みによる建物や家財の損壊

・水濡れ

給排水設備の事故や占有住宅内で生じた事故に伴う漏水、放水、溢水などによる水漏れ損害

・騒擾(そうじょう)または労働協議など

騒擾あるいは類似の集団行動による暴力行為・破壊行為に伴う損害

・盗難

盗難による盗取・損傷・汚損

・不測かつ突発的な事故、その他の破損・汚損

偶発的な事故による破損・汚損など


これらは一般的な補償対象であり、具体的な内容は保険契約や保険会社によって異なります。


共用部分と専有部分の違い


マンションの火災保険に加入する際に押さえておきたいポイント

の一つが、専有部分と共用部分の違いです。これらの部分には異なるリスクが存在し、保険の内容を理解して適切な補償を選ぶことが肝要です。


共用部分は、管理組合が管理規約で指定する箇所を指します。エントランス、ロビー、エレベーター、廊下などが典型的な共用部分です。賃貸物件でも分譲物件でも、共用部分に関する補償の責任は通常、個々の住戸所有者にはありません。


一方、専有部分は、購入者が所有する部屋そのものを指します。ただし、窓ガラス、バルコニー、玄関扉、壁や天井、床などについては、物件や保険会社によって定義が異なる場合があります。そのため、マンションの管理規約と保険会社の補償範囲を確認することが重要です。


専有部分と共用部分の補償の違い


専有部分と共用部分にはそれぞれ異なるリスクがあります。例えば、共用部分での火災や盗難に対する補償は、管理組合が責任を負う場合が一般的です。一方、専有部分での火災や盗難については、個々の住戸所有者が責任を負うことがあります。


火災保険の補償範囲も、専有部分と共用部分で異なることがあります。例えば、専有部分の火災保険は、自分の住戸に関する損害に対する補償を提供する一方で、共用部分の補償は、管理組合が管理する建物全体に関する損害に対する補償を提供する場合があります。


したがって、火災保険に加入する際には、専有部分と共用部分のリスクを理解し、適切な補償を選択することが重要です。それには、管理規約や保険契約書をよく読み、必要に応じて専門家に相談することが役立ちます。


もらい火について

マンションにおいて、火災が自室に被害を及ぼす場合、火元が自室内にあるだけでなく、隣室や上階、階下など他の部屋で発生した火災が自室に広がる「もらい火」のリスクも存在します。


このような「もらい火」は、自分や家族が注意を払っていても防ぎようのない事態であり、非常に厄介なものです。火災保険に加入していると、もしも「もらい火」によって自室に損害が生じた場合でも、補償を受けることができます。


ただし、一部の人々は「もらい火」の場合、隣の住人から損害賠償を請求できるのではないかと思うかもしれません。しかし、実際には、日本の法律である「失火責任法」により、加害者から賠償を受けることは困難です。


「失火責任法」とは、加害者に故意または重過失がない限り、原則として損害賠償を認めませんよ。という法律です。重過失とは、例えば、寝たままの喫煙による火災などが該当します。


したがって、「もらい火」による損害は、泣き寝入りになる可能性が高いのです。しかし、火災保険に加入していれば、このような不測の事態に備え、もらい火による損害を補償してもらえるため、心強いと言えます。


火災保険料を抑える秘訣

次に火災保険料を抑えるためのポイントを以下に示します。


・家財の補償金額の検討

保険会社が提示する家財の補償額は、家族構成や世帯主の年齢に基づいて決定されます。しかし、実際に必要な補償額よりも多くなっている場合があります。不要な高額な補償を抑えるために、必要な補償額を検討し、適切な金額に設定することで保険料を削減できます。


・不要な特約の除外

火災保険には、家財保険や借家人賠償責任保険などの基本的な補償に加えて、さまざまな特約が含まれることがあります。必要のない特約は外して、保険料を削減することができます。特に、他の保険で既に補償されている内容や、必要性が低いと考えられる特約は検討の対象となります。


・シンプルなプランの選択

契約内容がシンプルなほど保険料が安くなる傾向があります。必要な補償に絞り込んだシンプルなプランを選択することで、余分な保険料を節約できます。例えば、特定のリスクに対する補償の除外や、補償範囲を絞ったプランを選ぶことが考えられます。


・保険期間や支払方法の工夫

保険料を抑えるためには、保険期間や支払方法を工夫することが重要です。長期契約を選択することで保険料が割引される場合がありますし、一括払いや年払いにすることで総額を削減できます。また、支払い方法や更新のタイミングを見直すことで、節約の余地が生まれるかもしれません。


これらのポイントを考慮することで、火災保険料を効果的に抑えることができます。


まとめ

マンションにおける火災保険の必要性は、火災予防に十分な注意を払っていても、他の住戸からの「もらい火」や自己負担、加害者としての責任による損害リスクを考慮に入れる必要があります。火災保険は火災だけでなく自然災害や盗難などにも対応し、幅広い補償を提供しています。保険料を抑えるためには、家財補償や特約の選択、シンプルなプランの選択、保険期間や支払方法の工夫が重要です。